お盆明けの8月17日、BLUE FOR TOHOKU恒例のイベント「おいでよ!東京」を開催し、
福島の児童養護施設からたくさんの小学生を東京に迎えました。
子どもたちはこの日朝5時半に起きてバスに乗り込み、3時間以上かけて遠路はるばる東京に到着しました。
にも関わらず、イベント会場のキッザニアに到着するなり元気いっぱい!

警報が発令されるほどの大雨の中、早朝からかけつけていた100名近くのボランティアメンバーも
子どもたちの笑顔にほっと胸をなでおろしました。
今年福島から「おいでよ!東京」に招待した小学生は約60名です。
児童ひとりひとりにボランティアスタッフが一人ずつついて、
キッザニアでの職業体験やお相撲さんとの大運動会などのアクティビティを楽しみながら、
丸一日いっしょに過ごしました。
中には毎年この日を楽しみに参加してくれる子どももいて、
彼らの笑顔や成長をみるのはボランティアスタッフにとって何ものにも代えがたい喜びです。たくさんのボランティアや協賛いただいた企業、各施設の教職員の皆様のおかげで
今年も長い一日を無事に終えることができました。


なぜ「おいでよ!東京」なのか

当日の詳しいレポートは団体のホームページに委ねるとして、
ここでは非営利団体「BLUE FOR TOHOKU」の立ち上げメンバーのひとりとして
なぜこのイベントを続けているのかを書こうと思います。2011年の震災以降、被災地の子どもたちの心の支援のために
有志が集まってはじめたこのイベントも今年で4年目を迎えました。

支援を始めるのは簡単ですが、それなりに費用も労力も要するイベントを
小さな非営利団体が継続しつづけるのは容易なことではありません。

また、このイベントを実施することによって得られる成果が可視化しにくいため、
なかなかスポンサーを募りにくいことも事実です。

「おいでよ!東京」を毎年継続していくのかどうなのかについては、
BLUE FOR TOHOKUの主要メンバーの間でこれまで何度も議論を交わしてきました。

そして、「やはり続けていこう」という結論に至った理由は、
子どもたちには心の支援が必要だと全員が感じたから。

心の支援は、実際に子どもたちと会い、
肌を触れ合わせることでしか実現できないからなんです。

 

おいでよ!東京2015


子どもたちが将来安定した社会人生活を送るためには

金品による支援が必要な時期もありますが、
物質的な困難は時が経てばやがて解決するものです。
実際、被災地の児童養護施設には必要な物資が行き届いていて、
今では生活する上での不自由はほとんど見られません。
しかし児童養護施設の支援を続ける過程で、
子どもたちが本当に必要としているものがだんだんわかってきました。
それは、子どもたちが将来施設を巣立ち、後ろだてがないまま社会に出て、
安定した生活を送れるようになるための「自信」を育む機会です。
自分自身にも言えることですが、仕事をしていく上で「自信」は欠かせません。
(それに「笑顔」と「感謝」の3点が、私の基本セットです^^)
困難な時期を乗り越えるにも、与えられた仕事をやり遂げるのにも自信が必要です。
その「自信」が大きく欠けていると、上司に注意されただけで仕事に不安を感じてしまったり、
辛くなると職場を離れてしまったり、、、
安定した社会生活を送るのが難しくなってしまいます。


自信を育む

では、「自信」を生み出すためにはどんな経験が必要なのでしょうか。

はじめは「自信なんて自然に身についてくるもんだ。」と思っていた私ですが、
メンバーと情報交換をしながらディスカッションを重ねる中でヒントを得ることができました。

「自信」は、身近な人に愛情をもって叱られたり褒められたりする中で
徐々にかたち作られていくもののようです。

両親、あるいはひとりでも無償の愛を与えてくれる親がいる環境で育つと
なかなか想像しにくいのですが、
愛情をもって叱られたり褒められたりする機会がなければ、
子どもの心に「自信」が芽生えることはありません。
そして子ども時代に自信を育むチャンスに恵まれなかった場合、
後天的にそれを得るのは難しいと言われています。
児童養護施設への入所理由の約7割が、親からの虐待によるものだそうです。
幼い頃に日常生活を送ることさえままならない環境におかれていた彼らの多くは、
施設に保護されてからもなかなか自信を育む機会に恵まれないまま大人になっていきます。
18歳になると殆どの児童は出所して就職するのですが、
施設出身者の離職率の高さが問題になっていること。
そしてその理由は自信の無さが影響しているということを施設の職員の方からうかがって、
ショックを受けました。
これはなんとかしなければ…。

帰る場所がなく、身元保証人もいない彼らは再就職先を見つけるのが人一倍むずかしく、
どうしても社会的弱者になってしまうからです。

日本の宝である子どもたちに、ひとりでも多く社会の役に立ってもらいたい。
社会の役に立つ喜びを感じてもらうために、自信をつけて欲しい。
そのために自分たちができることからやっていこう。
それがBLUE FOR TOHOKUのメンバーが出した答えでした。

おいでよ!東京2015

豊洲北小学校の体育館でボランティアのお相撲さんたちと

 

「おいでよ!東京」は、おとなと触れ合う機会がもてなかった児童養護施設の子どもたちに、
たっぷりの愛情で包み込まれる感覚を肌で感じてもらいたいという思いで実施しています。ボランティアのおとながひとりひとりの子どもと手をつなぎ、
たくさんのアクティビティを通して褒めたり、様々な気持ちを受け止めたり。
夏休みのたった1日だけですが、おとなに大切にされ、
社会に受け入れられる感覚を子ども時代に体験してもらいたいのです。

私たちの試みの成果は、すぐに見ることができません。
また、プロジェクトの結果を定量的に測定するのはきっとむずかしいと思います。

けど、だからこそ、「非営利団体の私たちにしかできないんだ」という使命を感じて
活動を続けています。

震災をきっかけに児童養護施設の支援をはじめることになったメンバーは
全員がボランティアで、本業の合間をぬって活動しています。

いまのBLUE FOR TOHOKUは福島県内の施設を支援するだけで精一杯ですが、
やがては全国の児童養護施設の子どもたちに自信を育んてもらえるように
活動の場を広げていきたいと思っています。