ソーシャルメディアは本当の人生じゃない

Instagramで57万人のフォロアーを誇っていた18歳のEssena O’Neill

インスタクイーンの彼女がある日突然数千枚の写真を削除し、12歳のころからアップしつづけていた数万のLikeがついた写真のコメントに「これは本当の姿じゃない」などと書き込んで、多くのフォロアーを驚かせました。

さらにEssenaは、Instagramのプロフィール紹介文を「Social Media is Not Real Life(ソーシャルメディアは本当の人生じゃない」に変更。その後立ち上げたブログ「letsbegamechangers.com」には素顔のまま登場し、過去の「本当の人生じゃない」投稿写真を振り返って自身を考察しています。

EssenaがYouTubeに最後に投稿したメッセージ動画

 

ソーシャルメディアが人生に与える見えない影響

まったく立場は異なりますが、今回のEssenaの行動には共感をおぼえます。

私がFacebookを使いはじめたのは2007年。当時は日本語版はもちろん、プライバシー設定もなく、ソーシャルメディアを使っているという自覚もありませんでしたが、世界中の人たちが自分の投稿に「Like」をしてくれることに次第に快感をおぼえるようになりました。

使いはじめたばかりのころはまるで中毒のように、話題のレストランに行く度にチェックインしたり、「大好きな友達」との写真をアップしたり。毎日が充実しきっているかのように自分の生活を披露し、悦に浸っていました。

その後だんだんと公開範囲に気をつかったり、自慢や自己顕示欲の押し付けととれるような投稿は控えたりしながらも、2010年に「ソーシャルメディア時代の情報整理術」といったテーマの本を出版するころにはどんどんフォロアーが増え、他人からいいねをもらうことに義務感さえ感じるようになりました。
Facebookをはじめとするソーシャルメディアが、その頃の私を形作っていたかもしれません。

 

価値観の崩壊「それは人から評価されるか?」

片時もスマホを手放さず、気づかない間に人の評価ばかり気にしている自分に疑問を抱いたのは3年ほど前です。

あることがきっかけで、その先の自分のキャリアを考えている時に、「それは人から評価されるか?」という視点に立って判断しようとしていることに気がつき、恐ろしくなりました。

人からの評価を気にしてばかりいる価値観の軸が脆い人間に、本当の幸せは訪れません。私は長いソーシャルメディア生活の中で、スマホと向き合うことに時間をかけすぎたせいで、自分をしっかり見つめることを忘れてしまっていたのです。

 

ソーシャルメディア・デトックス

知らず知らずのうちに他人の評価に自分を委ねようとしていた習慣を断ち切るためにいろいろと考え、ついに数年間毎日欠かさず投稿していたFacebookをしばらく立ち上げないことを決心します。

ソーシャルメディア・デトックスを試みている間、美味しいものを食べる度に、写真を撮ってアップしたくて仕方がありませんでした。とっておきのニュースを伝えたかったり、楽しい経験を披露したかったり、強い承認欲求に駆られている自分を観察しながら何日も過ごしました。

その結果、フォロアー数もいいね数も増えなくなったと同時に、投稿への反応に一喜一憂する感覚がなくなりました。あとから振り返りたい写真を投稿することはあっても、ソーシャルメディア上で人からほめてもらうことを期待して投稿する自分がいなくなったのです。(現実社会ではやっぱりほめてもらえるとうれしいです^^)

また、大事な人との想い出は披露せず、心のなかの「とっておき」の引き出しにしまっておくようにしています。アウトプットしないことによって、家族や大事な人たちとの充実した時間を純粋に楽しむことに集中できるようになりました。

ソーシャルメディア・デトックスによってたくさんの気づきがあって、今では良かったと思っています。

 

人生を充実させるためのツールにしたい

ソーシャルメディアは、人と人との繋がりをインターネット上で構築することができる素晴らしいメディアです。なかなか会えない人と喜びを分かち合ったり、助けをもとめている人を支援するネットワークを築くことができたり、ソーシャルメディアによって私たちが受けている恩恵ははかり知れません。
私のようにうっかり罠にはまってしまうことがあったとしても、時々自分自身と向き合うことを意識していれば、人生をより充実させてくれるツールであることに違いないと思います。

しかし、今回のEssenaのようなティーン・エイジャーは、自身の価値観が成熟しないうちに多くの他人から良し悪しを評価されてしまうので危険です。
現実社会よりもソーシャルメディア上の人間関係に時間を費やし、不特定多数の無責任な人から受ける評価によって自身の価値観が左右されるような大人になってしまうと、人生があまりにももったいないからです。

2016年の年明けに発売する「ITオンチ脱出大作戦」では、ソーシャルメディアのマナーなどを紹介していますが、誰でも親しみやすいようにライトなタッチで漫画家さんに描いてもらっているため、セルフマネージメントについては深く掘り下げて語っていません。

しかし、ソーシャルメディアの普及が引き起こす社会的な課題はこの先も増えていく気がするので、少しずつ解決策を探っていきたいと考えています。