2015年に女性向けのビジネスバッグブランドを立ちあげました。
どのバッグも機能性が高く、高耐久性の非動物性皮革を使用していることが特徴です。

女性向けのビジネスバッグを手掛けるきっかけになったのは、
仕事のパートナーとして満足のゆくバッグがどこにもなく、デパートで探すのを諦めたから。
そして、バッグの素材を調べる過程でショッキングな事実を知ったからでした。

 

ブランドを立ち上げた動機

働く女性にとって、バッグは無くてはならないビジネスパートナーです。
手際よく仕事をこなすための優れた機能と、
持っているだけで自信を与えてくれるエレガントな外観。

頼りにできるそんなパートナーをずっと探し求めてきましたが、
残念ながらデパートの売場では、
理想のバッグに一度も出会えたことがありませんでした。

軽くて丈夫で、パソコンを傷つけずに入れられて
肩から下げられて、中身が丸見えにならなくて、
床に置いても自立して、
豪雨の日も満員電車の中でも気にせずに持ち歩けて、
洗練されたデザインで、会議のあとの会食にも連れて行くことができる。

たったこれだけの条件なのに、
十数年のキャリアウーマン生活の間に私が理想とするバッグにめぐりあえたことがなく
いつもどこか妥協しながら、パートナーを選ばざるをえませんでした。

 

じゃあ、自分で作ろう。

この先ずっと不満が解消されないのであれば、
いっそのこと私が納得のゆくバッグをデザインしてみよう。

バッグの製造に関してはまったくの素人だけど、
ちゃんと勉強してオーダーすれば、それなりのものが出来上がるはず。
そしてもし使い心地がよければ、将来商品化してもいいな。

そんな想いで自分のためのバッグを作りはじめたのですが、
製作を進めていくうちに、受け入れがたい事実を知ったのです。

 

ハラコ=胎子

スケッチしたバッグのデザインには、どんな素材が合うかしら。
やわらかいタッチの革をボディに使って、アクセントに短毛のハラコを並べてみようかな。

革素材についての知識がまったくなかった私は、
どこかで聞いたことのある「ハラコ」を英語かイタリア語だと勝手に思い込み、
適当にアルファベットを並べて検索しました。
しかし、検索結果に表示されません。

そして日本語で「ハラコ」を調べた時に
それが何であるかを知り
あまりの残酷さにショックを受け、しばらく言葉を失いました。

ハラコとは、「胎子」と書くように、
雌牛の体内にいる赤ちゃん牛のこと、
もしくは生まれたばかりの子牛のことだったのです。

その赤ちゃんから皮を剥いで革にしたのが、
ハラコの正体です。

たしかに手触りはやわらかく、高級感もあります。
しかし、そんなに残酷な行為によって生み出されたアイテムを
女性が好んで身につけるとは思えません。

少なくとも、私は絶対に使わない。
日頃身に付けるアイテムに使われている素材について、
あらためて考えさせられる大きなきっかけになりました。

 

本当に必要なのは、本当に動物の皮?

考えてみれば、ハラコに限らず
私たちはこれまでに着飾るため、あるいはステイタスのために、
多くの動物を犠牲にしてきました。

食用にされる牛からとれる皮革の数なんて、
世界中のアパレルメーカーの需要を満たすには不足しすぎているので、
たくさんの牛がファッションアイテムにされるためだけに殺されています。

その事実をなんとなく知ってはいたけれど、
私たち消費者は、高級ブランドが新作のレザーバッグを発表しても
問題意識が高めることなく
次々と動物を犠牲にすることを受け入れてきました。

これだけ文明が発展した社会で生活している私たちが、
パソコンやタブレットを詰め込むバッグを作るために
動物を使う必要があるのだろうか…?

 

本当に私たちが必要としているのは、
本当に、動物の皮?

身体から剥ぎとり、大量の水で血を洗い流さなげれば使えないものより
もっともっと優れた素材があるはずです。

本物の革を使わないからといって、見た目に妥協するつもりはありません。
デパートに並んでいる高級バッグにも見劣りしない
私のように働くことが好きで、
本当の意味で心地よく過ごしたいと願っている女性のために
ふさわしいバッグをつくりたい。

そんな強い衝動に駆られ、バッグブランドを立ち上げました。

 

スタートアップ

まずは私自身が納得できるビジネスバッグを作るために、
革を凌駕する素材を探し、バッグ用に加工することからはじめました。

調査したところ、軽くて丈夫で質感の良い「人工皮革」が
私が求めているイメージに近い素材だということがわかりました。

幸い日本は、優れた新素材の開発を得意としている技術的先進国です。
人工皮革を製造しているいくつかの国内メーカーにあたり、
私の想いを伝えたところ、生地を提供してくれる会社が見つかりました。
その人工皮革をエレガントに、風合い良くするために
東京の下町にあるプレス加工工場にも協力してもらっています。
また、熟練の職人さんを抱える関西で老舗の製鞄工房に
バッグの製造を依頼することもできました。

バッグのパーツや縫製に関する基本用語さえ知らなかった私に、
どのパートナー業者さんも親身になって協力してくださり、
プロジェクトは少しずつ前に進んでいます。

素材も加工も製造も、そしてデザイナーの私もすべて「Made in Japan」。
日本だけでなく、海外のワーキングウーマンが選んでくれるような
魅力的なバッグを提供してまいります。